Chocolate Time キャラクターと語る

エッセイ集

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003.イラスト① キャラクターの描き分け

 その是非はともかく、僕は小説とともに、それに登場するキャラクターを視覚的にイメージとして持ち、それを拙いながらもイラストで描いて、挿絵として使っています。これは、読者にとっては諸刃の剣。文章だけで自由に発想を拡げて、自分の中にキャラクターのイメージを作り出しながら読みたい読者の方には、こうして無理矢理イメージを押しつけられるわけですが、作者としては、あまりにもかけ離れた視覚的イメージを持たれるのは本意ではない。なかなか難しいところです。

 ただ、文章表現では難しいことも、イラストにすればすぐにその状況や様子がわかる、という利点は捨てがたい。さらに敢えて文章で表現せずにイラストに描かれた人物の表情や仕草で、作者の思いを伝える、ということもあります。

 

 さてさて、登場人物の性別を描き分けるのに、最も簡単な方法は、僕の場合眉の太さです。

 『僕の場合』と断ったのは、最近の漫画では、男の子でも眉は細いことが多い。それでもプロの漫画家さんは、ちゃんと性別を描き分けているからやっぱりすごいです。しかし僕は素人。しかも、基本的に表情に差をつける技術がまだまだなので、こうして安直に「男は太く、女は細く」眉毛を描くことで差別化しています。

 

 でも、実は他にも細かいところがあったりします。

 

 瞳の描き方が男と女とでは違います。女性の方がきらきらしています。また、基本的にオトコは睫毛は一本しか描かないのに対して、女性は2~3本ほど描き込みます。男性の瞳にも女性のそれにも、上部にハイライトが入り、瞳孔の周りの白目の部分にはグラデーションをかけます。そうそう、悪人キャラの場合は、瞳孔を小さめに描き、善良で可愛い系のキャラの場合は大きく描く、なんてことにも気を遣っています。でも、これは挿絵そのものの大きさによっては描き分けにくくもあるので、あまり極端な差としては現れません。なにしろ『目は口程に物を言う』。人物のイラストで最も慎重に時間をかけるのが、この目の表情なのです。

(モデル 天道 修平 日向 夏輝

 僕の小説の登場人物は、たいていショートヘアです。女性でも。これは単に描くのが簡単だから、という意味もありますが、僕自身がショートヘア好みだから、という直截な理由もあります。それに、例えば女性が仰向けに寝ている時、ロングだと、その髪の流れがなかなか複雑になってしまいます。もっと練習しろ?ごもっとも・・・。

 

 十代の人物といわゆる大人の描き分けは、まだまだ未熟です。「Chocolate Time」シリーズのケンジと健太郎は隠れ親子ですが、ヘアスタイルはほとんど同じです。ということは、顔つきでその歳の差を表現しなければならない。これはとっても難しい。老け顔、というのは、例えば鼻を長くする、顎を細くする、目を小さめにする、といった技を今のところ使っています。また、ヘアスタイルも、若い頃はハネ気味で、大人になると落ち着く、男性の場合は、歳が上になるほど、長さも少しだけ短くなります、と言うよりボリュームが減ります。

 なんて偉そうに言ってますけど、実際にはそうそう上手くはいきません。特にこのケンジと健太郎の場合は、ほとんど区別がつかずに、文章を読んで判断するしかない、という場面がとても多いです。いわゆる自虐ネタとして、エピソード6「Macadamia Nuts Chocolate Time」では、ワイキキビーチでケンジと健太郎と龍が、水着姿で並んでミカに写真を撮られる時「マトリョーシカケンジ親子」と言わしめたぐらいです(笑)。

 

ケンジのプロフィール / 健太郎のプロフィール

 女性の場合も、若者と大人の描き分けは基本的には男性の時と同じです。マユミ、真雪親子を例にとってお話ししましょう。

 

 真雪が16歳で初登場した時(エピソード6)には母マユミと全く同じヘアスタイルでした。ですから、マユミが16歳だった頃(エピソード1)と同じ画がそのまま真雪に使えるほどです。しかし、娘の真雪が16歳になったということは、母のマユミは36歳。さすがに同じ顔では都合が悪いですね。やはり老けさせないと(笑)。

 というわけで、16歳の娘、真雪と並んだ時の36歳のマユミは、少し面長ピアスをつけ、色つきリップを施しています。目は、あまり小さくしすぎると、本当に老けてしまって、マユミというキャラクターの持つかわいらしさが失われてしまうので、差をつけてはいません。また、同じ高校生でも、マユミとは違う性格を持つ真雪は、ヘアスタイルも少し変えました。龍とつき合い始めるエピソード7から、彼女の髪は母のそれよりも少し長くなっています。でも前髪の感じは同じです。

 

 このように、キャラクター毎に特徴をつけるという努力は、僕なりにやっているのです。でも、ケンジと健太郎、マユミと真雪などのように、血が繋がっている人間同士の場合、どこかに似ている所を残しておく必要もあるので、そのバランスがなかなか大変ではあります。まあ、ケンジと健太郎(とも)はヘアスタイルを見れば同じ染色体を持っていることは一目瞭然ですし、マユミと真雪の場合はそのバストを見れば一目瞭然ですね(爆)。

 

マユミのプロフィール / 真雪のプロフィール

 

2013,1,16 Simpson