Chocolate Time キャラクターと語る
エッセイ集
「夏輝夏輝夏輝夏輝っ!」
「もう、修平ったら……」
「おまえの脚は最高だ」
修平はいつまでも夏輝の太股に頬ずりしていた。
「ねえ、修平」
「なんだ?」
「サイギャップって知ってる?」
「サイギャップ?サイの食い違い?なんだそれ……」
「違うよ。サイ(thigh)っていうのは『太股』のこと。気をつけをして立った時にできる両太股の間の隙間のことよ」
「それがどうした」
「隙間が空くぐらい痩せた脚が最高だってアメリカの10代の女のコは思ってるらしいよ」
「隙間なんていらねえよ。そんな痩せた脚なんて、見たくも触りたくもねえし」
「そうなんだー」
「夏輝、おまえにはないだろ? そのサイギャップ」
「あたしも脚は細い方だけど、たぶん無理だね」
「いいんだよ、それでよ」
修平はまた夏輝の太股に鼻と頬をごしごし擦りつけ始めた。
†
最近AFP=時事10月5日(土)に配信されたニュースで取り上げられていました。
本来女性の骨格ではできるはずのないこのサイギャップという隙間を獲得しようと、アメリカの10代の少女たちが躍起になっているというのです。
男の僕から言わせれば、まったくのナンセンス、無駄骨。
英モデルのカーラ・デルビーニュ(Cara Delevingne)の超スリム体形が理想だとかで、へえ、と思って彼女の画像を検索して見てみました。
確かに細い。でも、胸もない。ただ、彼女の場合、たぶん骨そのものが細く華奢なので、脚はそれなりの肉付きだということがわかります。ある意味全体として彼女の体型はバランスが取れている、と言ってもいいかもしれません。まあ、モデルですから、病的な、不健康な体型では務まらないでしょうしね。
それを、単に太股の隙間にだけ注目して、こんな脚が理想、などと必死でダイエットやエクササイズに励んでいるというのですから、何ともばかげた話です。
ニュースでは、オトナの身体に近づいた少女たちが、自分の身体を「成功したり他人から好かれたり」する道具として認識し始めているのだろう、と大学の学者の見解を紹介しています。
SNSに成功した自分のサイギャップを載せて自慢したり、失敗して嘆くコメントを書いたりしている若者も。サイギャップがないことを「でぶ」と表現するなど、もうその過熱ぶりには呆れてしまいます。
そんなサイトの返信コメントの中には、そんな骸骨のようなカラダなんか見たくない、とか、病的だ、とかいう否定的なものが多いです。僕もそういった画像を見た瞬間、エジプトやインカのミイラを即座に思い浮かべました。肩の関節が盛り上がって見え、腰骨が突き出し、爪楊枝のようにか細い腕やふくらはぎ……。だれがそんなものを美しいと思うのでしょう……。でも、サイギャップ=理想の体型とほとんど盲信している少女たちを改心させる力はなさそうです。
目をひいたのは、「摂食障害」という言葉とともに載せられているコメント。つまり、自分はサイギャップなんて美的とも何とも思わないが、食べても太らない病気で、どうしてもこの醜い隙間ができてしまう、というもの。
『臨床心理学者のバーバラ・グリーンバーグ(Barbara Greenberg)氏は、たとえ極端なダイエットやエクササイズをしても「サイギャップ」はほとんどの女性にとって「夢想」でしかないと言い、「多くの女性は太ももの間に隙間ができるようにはなっていない。そういう骨格なんです」と説明する。
グリーンバーグ氏が言う「非現実的な執着心」を持ってしまった少女たちは危険な道に入りかねない。ますますプレッシャーを感じ、抑うつ状態や自殺行為に及ぶことさえある。深刻な摂食障害は脳や骨に何年も続く悪影響を与えることもある。サイギャップについて語る少女たちのページでも、断食ダイエットや自己嫌悪はよく見かける話題だ。』
先に、『男の僕から言わせれば』とお断りしましたが、僕自身、このサイギャップありの女性をイラストとして描くことはありません。
理由はただ一つ。萌えないから。
骨張ったカラダを抱きたいとは思わないでしょう?男であれば。
痩せてがりがりのカラダより、ふくよかで柔らかな、曲線の美しい身体の方が断然いいです。
口直しに、我が『Chocolate Time』シリーズの登場人物の中でも最もグラマー(しっ、死語?!)な、シンプソン真雪嬢に微笑んでもらいました。もちろんこの真雪を含めて、登場する女性の全てのイラストにサイギャップは出現しません。
2013,10,8 Simpson